2022年12月30日金曜日

プーチン関連翻訳本『クレムリンの殺人者』

  


 朝日新聞出版から11月30日に発刊された翻訳本『クレムリンの殺人者』は、ロシアのウラジミール・プーチン大統領について書かれた書籍では最も内容が深いと言って間違いない。秘密警察の工作員、サンクトペテルブルクの副市長、クレムリンの管財部、首相代行、首相、そして大統領としての恐怖政治を詳述している。著者は英国の調査報道ジャーナリストのジョン・スウィーニーで、オブザーバー紙や公共放送BBCを拠点に活動してきたという。

 プーチンが大統領になってから関与が疑われる多くの毒殺事件、暗殺事件を取り上げているが大統領に就任するきっかけも疑惑に包まれているという。後継指名を受けたプーチンの「人気を一躍高めたきっかけとなったのが、9月にモスクワなどで相次いだアパートの連続爆破事件だ。2週間たらずの間に4件の爆破があり、計400人以上が犠牲となった。プーチン氏は一連の事件をチェチェンのテロリストの犯行と断定、当時事実上の独立状態にあったチェチェンに対する、大規模な侵攻に踏み切った」。監修者の朝日新聞駒木明義論説委員は、これが相次ぐテロに怯えていたロシア国民に支持され、次期大統領の座を動かないものにしたと解説している。

 毒殺事件としては、その始まりとして2001年に元サンクトペテルブルク市長のサブチャークと2人のボディーガードの心臓発作をあげ、原因が毒薬だったと指摘。2006年には秘密警察の元キャリア職員でイギリスに亡命していたリトヴィネンコが突然死し、後で放射能物質ポロニウム210が使われたことが判明したが、スウィーニーはロシア国内でも使われているのではないかと調査。モスクワ刑務所に服役中だったチェチェン兵士、サンクトペテルブルグのギャングもリトヴィネントと同じような症状で突然死していたと記述している。また、イギリスに寝返ったロシア人スパイのスクリパリは娘と共に、2018年に神経剤ノビチェクで攻撃された。

 2020年8月、「ナワリヌイはシベリアの町トムスクからモスクワへ向かう飛行機に乗っていた。トイレに行こうと席を立ったナワノヌイは、トイレに行く前に足からくずおれた。ナワリヌイは床に倒れ、甲高い悲鳴をあげた。それは苦悶に絶叫するナワリヌイの声であり、また同時に、私の思うところ、ロシアの民主主義が死んでいこうとする今際の声だった」。この後、スウィーニーによると三つの奇跡が続いてナワリヌイは生き延びた。検査の結果、毒薬はスクリパリ親子に使われたノビチェクだった。

 こういったプーチンの恐怖政治の背景として、スウィーニーはカルフォルニア州立大学の精神医学教授に取材、破滅的なパーソナリティー障害、特にサイコパシー(精神病質)や自己愛性パーソナリティー障害に当てはまらないかどうか探っている。「プーチンにはサイコパスの兆候が複数認められるということだ。チックも見せずにペラペラ嘘をつく、恐れを知らずに優越感を抱く、非難を外在化する、幼い頃の生育事情が定かでない」。

 

2022年10月26日水曜日

岩波文庫から『シェフチェンコ詩集』


 ウクライナの国民的詩人と呼ばれるタラス・シェフチェンコの詩10篇を集めた『シェフチェンコ詩集』が10月14日、岩波文庫から発刊された。シェフチェンコは1843年から45年までの3年間に執筆した22篇の詩を手稿集『三年』に収録しているが、今回の詩集はこの手稿集から10篇を選んで訳出されたもの。編訳者は2018年に『シェフチェンコ詩集 コブザール』の訳を行い、群像社から出版した藤井悦子氏。定価858円。

 手稿集『三年』は10年間の流刑を背負う原因となった作品集であり、生前はもちろん死後も長い間出版は許可されなかったという。文庫カバーの表紙では、「静けさにみちた世界 愛するふるさと/わたしのウクライナよ。/母よ、あなたはなぜ/破壊され、滅びゆくのか。」と詩『暴かれた墳墓』の冒頭部を紹介、「理不尽な民族的な抑圧への怒りと嘆きをうたい--。帝国ロシアに対する痛烈な批判、同郷人への訴え、弱者に寄せる限りない慈しみが胸にせまる」と書いている。まさに現在のロシアの理不尽な軍事侵攻に対するウクライナ国民と怒りと嘆きに通じるものがある。

 解説によると、キーウ大公国が13世紀に解体したあと、荒野と化していたウクライナの地にコサックが住み着き、自衛のための軍隊を組織した。この武装集団が自覚的な民族集団へと変貌、正教の教育機関が設立されてキーウが地域の一大文化センターとなった。しかし、コサックは国家として独立していなかったため、ポーランドに軍事力を提供していた。ポーランド支配が厳しくなったことに反発、当時のコサックの首領フメリニツキィの指揮のもと、1648年に対ポーランド戦争が始まった。苦戦を強いられる中で1654年にロシアとの間に保護条約を結び、ロシアの庇護下に入った。それから13年後にロシアはポーランドと条約を結び、ドニプロ右岸はポーランド、左岸はロシアと主権を相互に認め合い、ウクライナの独立は失われた。

 ウクライナの苦難の歴史がフメリニツキィの愚かな選択に始まったというシェフチェンコの批判は、詩『暴かれた墳墓』から始まったという。この詩ではウクライナを売り渡したフメリニツキィ、ウクライナを支配するロシア人、そのロシア人を助ける愚かなウクライナ人の息子、この3者をウクライナを抑圧する者としてあげている。詩『無題(チヒリンよ、チヒリンよ)』でもウクライナコサックの過去の栄光と現在の悲惨な状況を対比、フメリニツキィの居城があり、その後も数代の首長が屋敷を構えたチヒリンを歌っている。さらに長編詩『偉大なる地下納骨堂』では、ロシア人の手で発掘されるフメリニツキィの納骨堂を題材にしている。


2022年9月25日日曜日

クルコフ『大統領の最後の恋』

 

 ロシア語で書くウクライナ作家、アンドレイ・クルコフは1996年に出版された『ペンギンの憂鬱』で世界的に知られる。日本でも新潮クレスト・ブックスの1冊として2004年9月に翻訳出版され、今年4月で16刷と好調な売れ行きを続けている。ところが、同じ新潮クレスト・ブックスで翻訳出版された『大統領の最後の恋』はなぜか現在絶版状態で、Amazonマーケっプレスで中古本が1万円以上の価格で販売されている。 

 新潮クレスト・ブックスの『大統領の最後の恋』は2004年9月に発刊された。帯には「ウクライナ大統領まで昇り詰めた男の愛の遍歴」と記載されており、コメディアンから大統領になったウォロディミル・ゼレンススキーを連想させる。新刊書は品切れが続いてどこにもないが、Amazonマーケットプレイスでは中古本が販売されている。しかし、最も安いのが12000円(9月25日現在)で、最も高いのは26733円。

 復刊ドットコムには「私の住む街では図書館にも置いていないので是非復刊していただきたい」という投稿が載っているが、まだ投票数が少ないので新潮社も復刊を決意できないかもしれない。しかし、ウクライナ本がロシアの軍事侵攻によって今年春以降相次いで重版され、新刊本も多数販売されている。そういう中では、ウクライナ文学にもこれから注目が集まっていくとみられる。新潮文庫での復刊を望む声もある。

 著者のアンドレイ・クルコフはレニングラード(現サンクトペテルブルク)生まれで、3歳の時に一家でキーフに移住して現在まで同地で暮らしているという。ロシア語で作家活動をしているため、ペンギンの憂鬱の帯には「新ロシア文学」の文字が記されているが、自分では「ロシア語で書くウクライナの作家」と評している。ただし、ウクライナの民族主義が高揚すると共に、非ウクライナ語作家の立場は厳しくなりつつあるようだ。





2022年8月5日金曜日

碧南にLAWSONマチの本屋さん

 

 碧南市の相生交差点近くに8月5日午前8時、書店を併設したコンビニエンスストア「ローソン碧南相生町三丁目店」がオープンした。大手書籍取次会社の日本出版販売(本社東京)がローソン(本社東京)と連携、書店とコンビニの各商品を扱う“LAWSONマチの本屋さん”として営業を開始したもの。店舗面積は約80坪で、このうち書籍部分は約12坪。

 LAWSONマチの本屋さんは、2021年6月に埼玉県狭山市に1号店を開店しており、今回の新店舗は2店目となる。もちろん、中部地区では初めての出店となる。ニュースリリースでは、「街に書店のある風景と、誰もが自由に本に触れ合える環境を守るための取り組みとして、生活のインフラを支えるローソンと提携し、『LAWSONマチの本屋さん』を展開しています。出版物の取次会社として本を供給するほか、そのマチのお客様の生活に溶け込み、心の豊かさを感じていただけるような売場作りを手掛けていきます」と書いている。

オープン日午前中にビジネスマンが次々来店しテレビ局も
通常のコンビニより雑誌、コミックは充実

 オープン日にはテレビ局やコンビニ業界や出版関係の業者も朝から多数詰めかけ、碧南市内からの来店客と合わせてかなりの賑わいとなっていた。しかし、書籍売り場はわずか12坪であり、記念品引換券付きオープンチラシには「1万冊以上の品揃え」とアピールしているが、ニュースリリースには約5千タイトルの取り扱いとなっており、書店と言えるほどの書籍量はないような感じがした。しかも、収容量の大きい壁面に並んでいるのはコミックで、そのほか窓際の棚や中央の島什器は雑誌中心の品揃えで、単行本はもちろん、文庫も最近の新刊をピックアップしている程度しかない。

 果たしてこの品揃えで“マチの本屋さん”とアピールしていいのか、個人的には非常に疑問に感じる。ただし、碧南市内には三洋堂書店くらいしか書店らしい書店がないので、限定した品揃えのコンビニよりは雑誌、新刊書を探しに行くのには便利だと思う。また、オンライン書店ホンヤクラブの店頭受け取りができるかチラシに記載されていないが、それが可能になればもう少し便利になるかもしれない。

2022年6月22日水曜日

書店の文庫陳列方法に違い

 


 Twitterで大阪のある書店が文庫本コーナーについて、「出版社ごちゃまぜの、著者あいうえお順。あんまりやってる店舗がないみたいで、いがいに好評」と書き込んだ。しかし、愛知県では精文館書店、三洋堂書店など大手書店チェーンの多くは日本人作家の文庫コーナーを「著者あいうえお順」に、海外作家のコーナーは出版社別にしている。ジュンク堂書店、丸善、三省堂書店、紀伊国屋書店など都市部の大手書店は、日本人作家、海外作家の両コーナー共に出版社別に陳列しているが、地方の郊外書店では事情は異なるといえる。

 なぜ地方の郊外書店チェーンでは、日本人作家の文庫コーナーは著者あいうえお順が多数を占めているのか? 個人的には東京生活で出版社別の陳列に慣れてしまっているため、著者あいうえお順の陳列は非常に見にくく感じてしまう。新刊コーナー以外の最近出版された文庫が何があるか探そうと思っても、著者あいうえお順では難しい。曖昧な検索ができないので、新しい発見や偶然の出会いがなかなかできない気がする。海外作家コーナーは出版社別なのに、なぜ日本人作家コーナーは違うのか? まさか買い取りの岩波文庫や、読者層の狭いちくま文庫などを扱っていないことを隠すためではないと思うが------。
 
 ブックオフも海外作家コーナーは出版社別だが、日本人作家コーナーは著者あいうえお順となっている。ただし、同コーナーとは別に岩波文庫、ちくま文庫のコーナーが講談社学術文庫、角川ソフィア文庫などの学術系文庫コーナーと共に設けられている。このため、ブックオフは著者あいうえお順ではあるが、郊外書店チェーンとはちょっと陳列方法の性格が異なる。

2022年6月11日土曜日

ルース・レンデルの角川文庫


  ヤフーオークションに出品されたルース・レンデルの角川文庫24冊セット。一部作品は持っていたが、こんなに角川文庫に作品がラインアップされていたことを初めて知った。『ロイフィールド館の惨劇』は、クロード・シャブロル監督がイザベル・ユペール主演で映画化したことで知られる。日本語版のタイトルは『沈黙の女』。同監督は『石の微笑』も映画化しており、同じタイトル名で角川文庫に作品はあるはずだが、オークション出品作品の中には見当たらない。ということは、ルース・レンデル作品の角川文庫は全部で何冊になるのだろうか?
 果たして、この価格で角川文庫のルース・レンデル作品24冊が競り落とされるかどうか分からない気がする。かつては人気を博したルース・レンデルも、今ではよほどの海外ミステリーファンでなければ名前すら知っていないと思われる。いずれにしても珍しい出品であることは間違いない。しかも、どの文庫も「目立った傷や汚れなし」と記載してある。

2022年5月2日月曜日

大創産業銀座グローバル旗艦店

 

 大創産業は4月15日、東京・銀座3丁目のマロニエケード2に主要3ブランドのグローバル旗艦店を同時オープンした。100円ショップ「DAISO」、300円ショップ「Standard Products」(スタンダードプロダクツ)、大人可愛い雑貨にリブランディングした300円ショップ「THREEPPY」(スリーピー)で、3ブランドの同時出店は初めて。6階をすべて使ってオープンスタイルで3店舗を展開、売場面積はDAISOが316坪、スタンダードプロダクツが130坪、スリーピーが51坪。
 
 このうち特に注目を集めているのがスタンダードプロダクツ。“ちょっといいのが、ずっといい”をコンセプトにしたベーシックな生活雑貨ブランドで、渋谷(マークシティ)、新宿(アルタ)に続く3店舗目の出店。リビング用品、食器、服飾雑貨、園芸用品など約2千点を品揃えし、関市の包丁、国産間伐材を使った容器、ヒノキのフレグランス、オーガニックコットンのタオルなどが人気となっている。また、新たに今治タオルとのコラボ商品なども販売。また、北星鉛筆と提携して開発した6Bから4Hまでの国産芯鉛筆「クラフトマンペンシル」も初めて展開し、バラ売りのほか、金属ケース入り12種類セットを税抜千円で先行販売した。

 3ショップとも店内撮影自由で、特に力を入れている商品の棚には「CAMERA OK」のホードを設置、SNSも活用したピーアール活動を展開している。私もこれに便乗してブログを書いてみた。同時に気になった北星鉛筆製のクラフトマンペンシル12種類セット、税抜500円のブルートゥーススピーカー、300円のオーガニックコットンハンドタオル2枚セット、300円の木製収納ボックス、200円のA5綴じノートを無人レジで購入した。
 

北星鉛筆製クラフトマンペンシル
ヒノキフレグランス
アウトドア用品も
DAISOでは駄菓子コーナーも展開
大人可愛い雑貨を集めたスリーピー
 なお、スタンダードプロダクツショップは銀座店に続いて、4月16日に梅田エスト店、4月21日にららぽーとEXPOCITY店、4月28日に京都四条通店を相次いでオープン。店舗網を東京都内から大阪や京都に一気に拡大した。










 

プーチン関連翻訳本『クレムリンの殺人者』

      朝日新聞出版から11月30日に発刊された翻訳本『クレムリンの殺人者』は、ロシアのウラジミール・プーチン大統領について書かれた書籍では最も内容が深いと言って間違いない。秘密警察の工作員、サンクトペテルブルクの副市長、クレムリンの管財部、首相代行、首相、そして大統領として...