2020年7月24日金曜日

半田市の古書店

 酢や酒などの醸造業が盛んな半田市は、黒沢映画『姿三四郎』のロケ地となった半田運河があり、明治時代にビール製造工場として誕生した半田赤レンガ建物も産業遺産として残っている。また、児童文学作家の新美南吉の故郷としても知られる。代表作『ごんぎつね』の舞台となった丘には新美南吉記念館があり、自筆原稿や書簡、関係図書を展示すると共に、図書閲覧室、カフェを併設し、隣には遊歩道も設けられている。
 市内に古書店はなく、ブックオフも営業していない。ただし、日本の古本屋のサイトをみると、「はんだ楽市」という業者の登録がある(店舗は存在していない)。また、新古書店としてブックオフはないが、コミックを中心に一部文庫も扱う古本倉庫という店名のロードサイド店がある。お宝倉庫、プレイズ、ファミーズなどのリサイクル店を展開するカジ・コーポレーションの店舗。ウェブサイトをみると同じ店名の店舗は他地区にはなく、半田店が唯一の存在のようだ。特にセットコミックの品揃えは充実し、コミックのほかにゲーム・金券の買い取り・販売も行っている。
 このほか、レンタルも行う複合ロードサイド書店の三洋堂書店乙川店が中古本コーナーを設置。コミック、文庫を中心に単行本なども多彩に品揃え。コミック以外の文庫、単行本の品揃えはかなり充実している。また、三洋堂書店は別の場所に同じ複合ロードサイド書店の半田店を営業しているが、こちらの店舗は中古本の販売を行っていない。
 
新美南吉記念館
古本倉庫
三洋堂書店乙川店

2020年7月19日日曜日

探求本「幻の馬 幻の騎手」

 最近復刊されたアルフレッド・W ・クロスビー著『史上最悪のインフルエンザ』(みすず書房)によると、忘れられたパンデミックとも呼ばれるスペイン風邪を取り上げた文学作品はほとんどないという。そういった中で、唯一の例外ともなっている作品がキャサリン・アン・ポーターの自伝的短編小説『幻の馬 幻の騎手』。「彼女はデンバーにあったコロラド・ロッキー・マウンテン・ニューズ社で記者として働いていた。そのころ彼女は若い陸軍士官と恋仲だったが、2人ともインフルエンザに倒れてしまった。もはや彼女の死は時間の問題と思われ、新聞社は彼女の死亡記事の活字まで組んでいたほどだった‥‥」(史上最悪のインフルエンザ)。
 日本語訳の『幻の馬 幻の騎手』は晶文社「文学のおくりもの」シリーズの27巻に入っているが、1980年3月の発刊ですでに絶版になっている。現在、アマゾンドットコムのショッピングサイトには4点の古書が出品されており、3点が2万5千円台で、最も高いものが5万2千円台。よく知っている東京の古書店の名前もあるが、決して納得できる販売価格ではない。実は「文学のおくりもの」シリーズ一括で販売している古書店もあり、「日本の古本屋」サイトをみるとこれ1冊よりかなり安い。晶文社に問い合わせたら復刊の予定はないということで、とりあえず図書館で借りて読むしかないし、実際に読んでみた。2つの短篇で構成されているため、「幻の馬 幻の騎手」だけでは全体の半分くらいの量である。どこかの古書店でぜひ適正価格で販売してもらいたい。1冊2万5千円ではとらぬ狸の皮算用で売れないと訴えたい。


2020年7月17日金曜日

豊田市の古書店

 広い道路が市内に張り巡らされ、さすがトヨタ自動車の本拠地と感じてしまう豊田市。商店街と呼べるような通りがほとんど見当たらないためか、店頭販売を行っている古書店は存在しないようだ。「日本の古書店」ウェブサイトには5店登録されているが、いずれも営業時間が記載されていない。このうちの1店、衣書店は自社のウェブサイトを持ち、あくまで買い取り業者として「豊田・三河・愛知の古本出張買取」を大きくアピール、ブログで買い取った古書、ゲームソフト、コミックなどの紹介を行っている。
 古書店に代わってブックオフの存在感は高いようで、複合型のスーパーバザーはないが、市内には北部の豊田朝日町店、西部の豊田柿本店、中央部の豊田下林店の3店舗が営業している。イオンスタイル豊田の南の国道248号線沿いにある下林店は中型店舗で、1階が駐車場、2階が売り場というピロティ店舗となっている。国道248号線沿いには2フロアの巨大書店・精文館書店新豊田店があり、学生、若いビジネスマンなどの来店も多いためか、文庫を中心に書籍の品揃えはなかなか充実している。また、同じ中型店舗の柿本店は市役所など官公庁が並ぶ国道153号線沿いにあり、平屋造りの店舗で営業。書籍は平準的な品揃えで、あまり特徴はない。
 交差点角の平屋造りの店舗で営業する朝日町店は、下林店、柿本店と同様に中型店舗とウェブサイトでは記載されているが、ちょっとこじんまりした印象の店舗。書籍の品揃えも他の2店に比べて量的に少ないように感じられる。

豊田スタジアム横に黒川紀章設計の豊田大橋
下林店
柿本店
朝日町店

2020年7月13日月曜日

名古屋市の専門古書店

 名古屋市内には東京・中央線沿いに点在するような新世代古書店はないが、ユニークな専門古書店が存在する。それが文庫専門の百萬文庫であり、文学書専門の千代の介書店。さらに、古書と雑貨が渾然と並ぶサブカルチャー専門のBiblioMania(ビブリオマニア)も加えてもいいかもしれない。
 百萬文庫は、地下鉄川名駅から徒歩10分の2階建ての長屋風店舗の一角で営業している。両隣の理髪店、焼き鳥屋に挟まれた店舗の間口は狭いが、店内に入ると非常に奥行きが深く、本棚のトンネルに入ったように感じる。この細長い売り場には一部新書も含めて、小説を中心に様々な文庫がぎっしり並んでいる。SF、ミステリーなどサブカルチャー系はもちろん、岩波文庫、ちくま文庫なども多彩にラインアップ。中には珍しいディケンズなどの3、4冊セットものも置いてある。単行本、雑誌は全く置いていない徹底ぶりで、文庫のような低い客単価商品でどうやって営業できているのか、ちょっと考えてしまうほどである。徒歩圏内に名古屋大学、南山大学があり、日常的に訪れる学生など固定客も多いかとも想像される。
 千代の介書店は、リニアモーターカーと接続する地下鉄藤が丘駅から数分の大通り沿いにあり、「古書・文学」の文字と店名、電話番号入りの看板を大きく掲げている。店舗の入り口は建物右横の階段で、横のドアを開けると通路上まで陳列棚が張り巡らされた売り場にぎっしり書籍が並び、閲覧室のない開架式図書館のような雰囲気になっている。これら売り場内の書籍は文学書が中心で、中でも日本文学関係は著者の50音順に天井近くまで伸びる壁面棚に並び、一部は通路の天井下に架設された棚も使って書籍を陳列。同店ウェブサイトによると取り扱い書籍は約3万冊で、入り口付近に並べている文庫類を除くとほとんどが単行本。しかも、映画、音楽、哲学、海外文学などの単行本もあるが、大半は日本文学。東京・神保町にけやき書店という日本文学専門の古書店があるが、同店より書籍量は多いかもしれない。ただし、よく見ると村上春樹、多和田葉子など現代作家関係の書籍は極めて少ない。
 ビブリオマニアは、地下鉄栄駅から徒歩5分の久屋大通すぐ裏という便利な立地ながら、入り口の分かりにくい雑居ビル2階にある。以前は伏見地下街で営業していたが、2016年末に移転した。「なごや古本屋案内」に伏見地下街当時の店舗が掲載されているが、ホビーグッズ、雑貨などが入り交じった今の店舗と異なり、サブカルチャー系の古書中心の品揃えとなっていたようだ。今も海外SFなどの古書も並んでいるが、新刊書も混在し、特に写真集、画集は小出版社の新刊書が目立ち、同人誌やインディーズ書籍も多彩に並んでいる。かなり古書店の枠からはみ出したキャッチフレーズ通りの〝特殊書店〟と言える。
昭和区の百萬文庫
名東区の千代の介書店
中区のビブリオマニア

2020年7月5日日曜日

岐阜市の古書店

 JR東海道本線快速で約20分、名鉄本線も走っている岐阜市は名古屋市の通勤圏にある。中心繁華街として知られる柳ケ瀬は岐阜タカシマヤ、ドン・キホーテといった大型商業施設もあるが、500メートル四方に張り巡らされたアーケード街にレトロな雰囲気の商店、飲食店や、新世代の雑貨店、飲食店がぎっしり並んでいる。
 〝古書と古本〟徒然舎(つれづれしゃ)は、柳ケ瀬の中心アーケード街・柳ケ瀬本通りに接する美殿町商店街に位置する。店主は出版社から独立・開業した深谷由布さん。商店街のウェブサイトによると、2011年春に靴を脱いで上がる古民家スタイルの店舗を殿町に開業、2014年秋に規模を拡大して同商店街に移転した。2013年発刊の「なごや古書店案内」には初代店舗が紹介されており、かなり交通の便の悪い奥まった場所にあったようだ。また、同書では無店舗販売で営業する太閤堂書店の2代目が紹介されているが、徒然舎の買取PRチラシでは店主夫婦として顔写真入りで掲載、「名古屋にて創業40年の太閤堂書店2代目。徒然舎店主と出会い、現在は共同経営」とある。
 店舗はガラス張りの明るい雰囲気の店づくりで、文学、哲学など人文書を中心に美術書、絵本、実用書、さらに定価販売の小出版社の書籍、リトルプレスも含めて幅広いジャンルの書籍を販売。文庫では海外ミステリーなどサブカルチャー系は少ないが、ちくま文庫、岩波文庫などは充実した品揃え。絶版ものはそれなりの値付けだが、珍しい書籍と出会える可能性を感じる品揃えとなっている。東京の中央線沿線には古本案内処、コンコ堂、音羽館など地元住民も遠方の本好きも立ち寄るカジュアルな雰囲気の古書店が点在しているが、徒然舎も同質の古書店の匂いが漂う。なぜかこういった雰囲気の店舗は愛知県ではまだ見い出せていない。
 このほか、岐阜市ではJR岐阜駅前の線維問屋街に岡本書店が営業している。と言っても、シャッターが半分閉めてあり、主力のネット販売の在庫用倉庫を一部顧客にも開放している雰囲気。取り扱いは郷土資料、歴史、国文学、趣味本など。ブックオフは岐阜うさ店、岐阜則武店と、ブックオフプラス岐阜オーキッドパーク店の3店舗ある。岐阜オーキッドパーク店は、エディオンオーキッドパークの2階に出店する唯一の大型店舗。アパレル、服飾雑貨も加えた複合リユース店であり、書籍だけみると名古屋市のブックオフプラスと比べて商品量は多くない。
柳ケ瀬に接する美殿町商店街
徒然舎

岡本書店
ブックオフプラス岐阜オーキッドパーク店

2020年7月4日土曜日

名古屋市千種区の古書店

 名古屋市千種区は名古屋大学、愛知学院大学や高校などのキャンパスが散在する文教地区。らくだ書店本店、ちくさ正文館書店本店、ウニタ書店、ON READINGといった有力書店が集中し、古書店も比較的多い。古書店では、2013年に風媒社から「なごや古本屋案内」を発刊した鈴木創氏が経営、市内を代表する古書店として知られるシマウマ書房がある。また、名古屋大学に近い地下鉄本山駅前には大正13年創業の大観堂書店、学術書専門の脇田書房が営業している。このほか、2階建てロードサイド大型店舗のブックオフプラス千代田橋店も北部にある。
 シマウマ書房は、もともと本山駅前のビルの地下で営業していたが、昨年4月に今池駅の西、広小路通の南を並行して走る通り沿いの3階建て雑居ビルに移転した。同ビルの1階から3階までの3フロアを使って売り場展開し、1フロアの従来店舗より大幅に陳列スペース、蔵書量も拡大した。ただ、1階は狭いショールーム的スペースで、開放的に廉価な古書だけを並べている。中心的な売り場はレジカウンターを設けた2階で、幅広いジャンルをこだわりのセレクトで展開。特に海外ものも含めて文学関係は充実した品揃えで、単行本のほか、廉価ではない文庫も置いている。階段まわりが吹き抜け構造になっている3階はやや狭い売り場で、美術書、写真集などアート関係の大型本を中心に品揃え。全体的にサブカルチャー系の書籍類は少なく、本好きをターゲットにした東京・吉祥寺の百年と似たテイストの店舗と、個人的には感じる。
3フロアで展開のシマウマ書房
大観堂書店
脇田書房

プーチン関連翻訳本『クレムリンの殺人者』

      朝日新聞出版から11月30日に発刊された翻訳本『クレムリンの殺人者』は、ロシアのウラジミール・プーチン大統領について書かれた書籍では最も内容が深いと言って間違いない。秘密警察の工作員、サンクトペテルブルクの副市長、クレムリンの管財部、首相代行、首相、そして大統領として...